第1話 アニメのような出会い

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第1話 アニメのような出会い

 2030年代、それは人類史上最大の大創作時代といっていいだろう。2010年代後期から2020年代前期にかけてAIは凄まじい進歩を遂げた。始めは人のアシストをするに留まっていたAIが、やがて人の仕事の90%を肩代わりする様になった。それにより社会には失業者が溢れた。AIの仕事ぶりは素晴らしく、人々の暮らしは豊かになったが、一方で人類はその存在意義を脅かされる事になった。  しかし、AIは苦手な分野があった。それは『クリエイト』、つまり創造・創作である。AIは指示された仕事を状況に合わせて臨機応変に遂行することが出来るようにはなったが、全く新しいものを一から生み出す能力に欠けていたのである。そこで人々はAIに仕事を任せる事により生まれた時間を創作にあてた。新しい創作物投稿サイトが次々に生まれ、その投稿数は2020年と比較して実に10000倍にも及んだ。また、それらの投稿作の中でも一際優れているものを映像化する企業もそれに合わせて増え、大規模な映像作品も大量に産まれる事となった。  「ふむふむ…。」  部室棟の隅の方にある小さな部屋で本を読む男が一人。  「ほうほう…。」  ペラッ  「なるほどなるほど。」  ペラッ  「そ、そうきたか~~~!!」  男はページをめくるたびに声をあげる。  パタン。  男は本を閉じる。  「いやー面白かった。」  そして男は思いに耽る。  (ああ、こんな素晴らしい作品がこの世にあったなんて知らなかった。こんな素晴らしい作品がアニメ化されたらどれだけ素晴らしいアニメになるだろう。ちゃんとした人選で制作したら覇権間違いなし!!)  キーンコーンカーンコーン  予鈴が鳴り男は我に返る。  「まあ、実際にはアニメ化とかあり得ないんだけどな。」  男はそう呟いた。
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