プロローグ

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 突如、土手の見慣れない穴から軽自動車ぐらいの大きさのレンガ色した物体が飛び出してきた。3つの影山がこちらに向かって滑らかに平行移動してくるのが見える。 「わ――ッ! カルキノスだ!」 「早く逃げろ!」  ケプラーシオマネキは片方のハサミがアンバランスに大きい種で、アリやハチのような社会性を帯びているのが特徴である。今接近しつつあるのは、トゲ付きの戦闘に特化した兵隊ガニで、真っ赤なボディからタイプは一目瞭然となっている。 「バゴリーニ! 何やってんだ!」  音楽の才能はあるが、どんくさい彼は河原の石に躓いて転んだのだ。 「食べられちゃうよ!」  バゴリーニが両手で顔を覆った時、ケプラーシオマネキの爪が彼の上着を挟んで破いた。中型カルキノスといえども子供相手、しかも集団で襲われれば、巣穴にまでお持ち帰りされ夕食の一品となってしまう。 「逃げろ! バゴリーニ!」  少年達の悲痛な叫び声が河原に響き渡る時、丁度アマゾネスの駐在巡査が通りかかった。 「あっ! お巡りさん。助けて下さい!」  群がる子供達を尻目に婦警さんは顔をしかめて呟いた。 「あ~、カルキノスの数がちょっと多すぎるわ……。今から署に応援を頼んでも間に合わないでしょうね」 「そんな! 友達をどうか助けて下さい!」 「無理、無理~。B級奴隷が少しばかり数を減らしても、誰も気にしないわよ」     
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