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旅立ち
真白いライダースジャケット風戦闘服にアイデンティティーの赤いヘルメットを抱くのは、カルキノスハンター・ヒコヤン。
彼は幅20メートルにも及びそうなケプラー22b総督府の正門前――ほぼ中央に歩を進めた。金色の長髪と腰下までの外套に熱い風をはらませながら石畳を踏み締めると、オーミモリヤマ市・市章がデザインされた門扉の中央が左右に割れ、はるか彼方にまで道が開けた。
改めて見上げると、古風な石垣の上に建つ総督府の威厳に満ちた姿に圧倒される。何とも不可解な意匠で、時計台のある石造り階より上方には、ガラスがはめ込まれた骨組みが、まるで重力を無視するかのように天高くそびえ立つのだ。
「何とも悪趣味な建物だな……」
S級に昇格を果たし丸3年目を控えたヒコヤンであるが、この地を来訪したのは他でもない。……ケプラー22bの各コロニー都市を統べる総督府から緊急招集がかけられたのだ。オーミモリヤマ市は彼にとって馴染みも薄く、荘厳な首都周辺は特命でもなければ、まず寄り付かないエリアなのである。
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