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「あー、じゃなくて……」
末っ子の昌明は朝に弱い。赤ちゃん用のイスに座ったまま、船を漕いでしまう。スプーンでねじ込んでみても、よだれと一緒に口の端からこぼれてしまう。
「完全にパパに似たわね」
おそらく四度寝に突入している二階の父を思い浮かべながら、私と母はそろって頷く。
朝ご飯を食べ終えたら着替え。その次に、妹二人の髪を結わないといけないのだけれど――。
「ねぇちゃ、ねぇちゃ! さっちゃん、うさちゃん!」
「ねぇちゃ、ねぇちゃ! りっちゃん、うさちゃん!」
二個ワンセットのうさぎのヘアゴムを指差して、一拍。睨みあう沙奈と里奈を見下ろして、ため息をつく。
うさぎ、くま、ねこのヘアゴム、チェック柄のリボン、ピンク色のカチューシャ――。
色々とある中から毎朝、気分で選んでいるのに二人の意見はぴたりと一致する。さすがは双子、可愛い! なんて、言っていられたのは入園式から一週間くらいのこと。
「じゃあ、沙奈も里奈も。今日はうさちゃんでひとつ結びに……」
二個ワンセットだから一つ結びなら問題はないのだけれど、
「「だめ! ふたっつ!」」
残念なことに二つ結びというのはブレたことがない。こうなったら仕方がない。いつもの手だ。
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