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「はい、じゃーんけーん……」
「「ポン!」」
「「ポン!」」
「「ポン!」」
二人は真剣な表情で、小さくて丸々とした手を何度も振り下ろす。あいこの回数の多さも双子のなせるわざだろう。
そのすきに自分の髪をすいて、ブラウンの髪ゴムでさっと一つ結びにする。
「「ポン!」」
「やったぁ~!」
「あ~!」
ちょうど決着が付いたらしい。
「それじゃあ、鏡の前に座って」
にっこりと笑って、私はブラシを構える。
大きく手を振る沙奈と里奈と、保育士さんの腕の中ですでにうとうとし始めている昌明に手を振り返して、保育園を出た瞬間。
「じゃあ、お迎えはよろしくね。行ってきま~す」
「はいよ、行ってらっしゃい!」
おっとりとした口調とは裏腹に駆け出す母を見送って、一息つく。これで我が家の朝の乱は一応、終結だ。
きびすを返して、ゆっくりと通学路を歩いて中学校に向かう。少し早い時間のせいか。通学している生徒の姿はまばらだ。
少し先を、同じ制服を着た女の子が歩いている。ボブの髪を三つ編みでハーフアップにしている。朝、ブローして整えたのだろう。毛先もゆるく巻いていている。髪を揺らして歩く後ろ姿をぼんやりと眺めて、
「……かわいい」
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