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思わず、ぽつりと呟く。と、――。
「何が?」
「ふおぁ!」
独り言のつもりだった言葉に、それも背後から急に返されてびっくりする。振り返ると、
「すごい声!」
人懐っこい笑顔を浮かべた夏樹が立っていた。
「なつくんか。急に話しかけないでよ。びっくりするじゃん」
「ごめん、ごめん」
後輩とは思えない軽い調子で言って、夏樹は隣に並んで歩き出す。跳ねるような足取り。染めていないけれど茶の強い髪が、ふさふさと揺れる。
お隣さんで、弟と同い年。家族ぐるみの付き合いがあるせいか、中学に上がっても先輩後輩という雰囲気にどうしてもならない。大型犬を思わせる夏樹の人懐っこい性格もあるだろうが。
「それで、何をうらやましそうに見てたの?」
「うらやましそうって……」
違った? と言うように、顔をのぞき込んで首を傾げる夏樹に、
「……違わなくはないけど」
大人しく頷く。そういう気持ちがないわけじゃないし、夏樹相手に見栄を張っても仕方がない。
「あの子の髪型、可愛いなって」
「三つ編みのハーフアップの子?」
「そそ」
「やったらいいじゃん。優奈ちゃんがやったら、もっとかわいいと思うよ」
「あんな手の込んだこと、やってる時間ないから」
「……少しは照れてよ」
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