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けらけらと笑って、一つにまとめた髪を撫でた。かわいい髪型をしている子をうらやましいと思うのは本当だけど、保育園で沙奈と里奈が、
「かわいい!」
と、言われるのを見るとうれしくなって。結局、次の日の朝も沙奈と里奈の髪に、時間を掛けてしまうのだ。
「はるくんにも心配されちゃってるっぽいんだけどねぇ」
「はるちゃんに?」
一才下の弟ーー夏樹にとっては幼なじみの名前に、夏樹は目を丸くする。
「はるくんの朝練が休みの日にさ。髪を引っ詰めただけで家を出ようとしたら、慌てて止められちゃって」
「はるちゃんにも、そういうことを気にするだけの神経があったんだ」
「お、言うねぇ。さすがは幼なじみ!」
「幼なじみと言うか腐れ縁でしょ、あれは」
「それ、同じことをはるくんも言ってた」
渋い顔の夏樹に、笑いがこみ上げてくる。それを言うときの表情までいっしょで、なんだかかわいい。
「やっぱり仲がいいよね」
からかうように言うと、
「そういう話をはるくんが優奈ちゃんにしてることの方がびっくりだよ。姉弟仲、いいよね」
なぜだろう。そう言う夏樹の顔は、さらに渋い顔だ。その表情の意味がわからなくて、首を傾げていると、
「そうだ」
夏樹はポン、と手を叩いて、
「じゃあ、俺がやってあげようか?」
そう言って、おどけた仕草で両手を広げて見せた。
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