#001 Father

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はみ出した頭蓋骨を どうするのかと思っていたら 火葬場の職員が暢気な声で 「頭蓋骨収まらない人もいるんですよねー。 でも蓋しちゃうんで大丈夫です。」 と。 笑いながら骨壺に乱暴に蓋をし バリバリ!メシャっ!と 大変嫌な音を立て 私の目の前で 父の頭蓋骨が砕けた。 枯れ葉を踏みしめる音にも似ていた。 父の死から火葬まで 一度も泣くことの無かった私は その瞬間悲鳴を上げ はじめて泣きながら 火葬場の職員に掴みかかろうとした。 と、 聞いている。 自分が悲鳴を上げた事は全く覚えていない。 ひとしきり泣き叫び暴れ、気絶したと教えられた。 それ以来私は 菓子のパイが食べられなくなった。 パイを咀嚼する音は 火葬された骨が砕ける音に 大変似ている。
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