#001 Father

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生きていれば 人はいずれ死を迎える。 寧ろ 人は生まれた瞬間から 死に向かって歩いているのだから 死ぬことこそが 人として生きた証でもあり 人生の最終目標のようなものであると 思いこんでいた。 当たり前に誰しもが迎えるソレを どうして悲しめるだろうか。 ましてや 良い感情などなかった、 寧ろ害悪でしかなかった血縁類が 次々と老齢や病 大災害で亡くなっていく様は 私にとっての 大きな喜びであった。 大きな喜びであるとともに 理不尽な思いをしなくてはならない 苦痛の時間でもあった。 泣ける訳もない葬式で 泣かない事を薄情だと責められ 周囲の意向に合わせ 意気消沈の顔を作っていれば 葬式後の酒の席で一人暗い顔をしていて 空気が読めないと叱られた。 そして2、3歳の頃たった一度会った程度の 顔も知らない名目ばかりの親戚からも 「あなたはいつも、昔からそうやって自由気ままよね」 と謎の言葉を向けられる。 まだ人格も出来上がっていない幼少期に たった一度会ったのみ。 私にとって、誰だか全くわからない他人以下の人間に まるで日々の生活全てを見ていたかのような口ぶりで 話されるのは苦痛だった。 泣かなければ薄情だと言われ 笑わなければ空気を読めと言われ その都度、その場に居る人間のいう事に こたえようと努めたが 結局の所、私がどんな顔をしていようと 取り敢えず何かを言いたがる人達の集まりであった。
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