#002 Sexual experience

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半分ほど聞き取れなかったが 何を言われたのかは考えたくも無い。 そこから 私の記憶は無くなっている。 覚えていない間に 何をされたかは判らないが “何かをされた”のだろうという感覚はあった。 私の春はそこで散ったのかもしれないし 免れたのかもしれないが できれば後者であってほしい。 大人になり (ようや)く気が付いたのは 「逃げる」、「叫ぶ」という作業は それを自身の危機と自覚できているからこそ 行えるもので。 何をされているのか よく判っていない小学一年生は ただただ、理解が追いつかないままの頭で 男が去るまで、されるがままになっていた。 私は動かなかった。 叫ばなかった。 しかしそれは 決して合意でも肯定でもなかった。 それだけは言える。
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