1.騎士ガウィの借金

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「……その通りだ」 「あなたに騎士としての生き方があるのと同様、わたしにも覚悟がある。そこのところをわかっていただけるんでしょうな?」 「なるほど、立派なものだ」  曖昧に笑うガウィの目の前で再び、ダントンは片眉を吊り上げ、逆側の頬をヒクつかせたが、その後すぐにため息をついた。 「……来週また来ます。その時に払う宛てもないようなら、今度こそなにかをカタにいただきますからね」 「申し訳ない!」  再び床に額をこすりつけるガウィに背を向け、ダントンはガレージを出て行った。 「……やれやれ」  ガウィは身体を起こし、そのまま床にあぐらをかいて座りこんだ。危うくカタに取られそうになった愛機『レフトフォイル』を見上げる。 「……来週か。なんとかしねぇとなぁ」  無精ひげの生えた顎を親指で撫でながら、ガウィは思案した。  騎士身分だとはいうものの、爵位を持っているわけでもなければ、領地があるわけでもない。安定した定期収入がない上に、機甲全身鎧フルプレートの維持にも金がかかる――エゥディカ大陸における支配階級であるはずの騎士も、その生活は楽ではない。最近では金に困り、廃業して一般企業に就職したり、または犯罪に手を染める騎士も多いと聞く。 「……バイトでもするかなぁ」 「なんの仕事をするつもりなんです?」  後ろから不意にかけられた声に思案を遮られる。振り返ると、紙袋を抱えたメイド服姿の女が、いつの間にか立っていた。 「やぁ、V.D.。昼メシ、買って来てくれたか」 「ナイザン・ジョンのスパイス・ブルズ、チーズとマスタードたっぷりトッピングオニオン抜きにチキン・ブレード。好きなのはわかりますが、本当こればっかりですね」 「いいじゃないか。返済交渉のカロリーを補充しないとな」  メイドのV.D.――本名はヴィー・ディーディアントゥという――から紙袋を受け取り、ガウィは隣接する母屋のリビングへと向かいながら、さっそくチキン・ブレードを取り出してその場で齧る。 「うん、美味い。この店、バイト募集してなかったかな?」 「やめてください。あたしが恥ずかしいです」  そういいながらV.D.はキッチンへ立ち、コーヒーを淹れ始めた。
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