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第2章
キーボードの打ち込みを止めた原田智也は、机の脇に置いてあった生ぬるいジュースで喉を潤した。昨夜から浴びていたディスプレイの光は、数時間前の日の出と共に消失している。
智也はクーラーで冷えた身体を温めるべく、淡い色のカーテンを避けて窓からベランダへ出た。アパートの二階から見える景色は代わり映えすることなく、隣接する道路からは通勤通学する人たちの姿も消え、いつもの緩やかな時間が流れていた。
午前の日差しに身体を晒しながら、智也は大きく背伸びをした。固まっていた背中の筋肉が小さな悲鳴を上げるのが心地よい。次に強く目を閉じて、酷使した目の周りの筋肉をほぐした。それから「はあ」と大きなため息をついて、決してリセットされない疲労を抱えたまま、また元の部屋へと戻っていった。
部屋には買い置きの食料は無く、今から買い出しに行く気力も無い智也は、空腹を紛らせる呪文のように、
「バイトまで寝るか」
と小さな声で独り言を呟いた。そして、パソコンの電源を切って、ベッドに寝転がり、眠気がやってくるのを静かに待った。
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