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ぶっきらぼうに答えた信一郎が、自分の大人気なさに反省している最中も、隣の木下は構わず話し続けた。
「坂本先生には、これから面接をしてもらって、気づいた事や気になった点を報告していただきたいんです。面接相手については先入観を持って欲しくないので、資料以上の情報は控えさせてください。あと、面接には刑事と弁護士が同席をします」
「キミは?」
「もちろん同席させてもらいます。あ、申し遅れました―――」
「木下君でしょ」
「はい、プロジェクトリーダーをやらせてもらってます。僕、沼田さんの下で働いていて、沼田さんに言われて、坂本先生の本は昔、何冊か読んだことがあります」
「昔ね……」
日々更新されていくテクノロジーに関する本にとって、昔という言葉には時代遅れという意味しかなかった。木下に悪気が無かったとしても、長い間、業界からつまはじきにされていた坂本には、嫌味にしか取れなかった。
到着したエレベーターに、先に乗り込んだ木下が目的の階のボタンを押した。
「ところで、なぜ弁護士が同席を?」
「さあ、上の人間が決めたことなんで自分には解かりかねます。彼女は会社の顧問弁護士でもないので、実は僕も初対面なんです」
「彼女?」
「女性弁護士です。綺麗な方ですよ。ただ……」
「ただ、何?」
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