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「ずいぶん待たされているので、機嫌が悪いかもしれません」
「それは仕方ないでしょ」
「もちろん先生は悪くないです。まあ、気にしないでください。面接の間は黙っているように頼んであるので」
「面接の内容は――質問に制限はないのかな?」
「それは先生に任せます」
エレベーターが止まりドアが開くと、木下の先導で静かな廊下を進み、突き当りにある会議室の前へ着いた。先に立ち止まった木下が「ここです」と、ドアを開けて信一郎に入室するよう促した。
信一郎が足を踏み入れた会議室は、正面の窓から僅かに傾いた西日が差し込み、天井の照明はほとんど意味を成していなかった。広い部屋の中央には、椅子に座った面接相手のシルエットが見えるだけで、面接相手が背中を向けて座っているぐらいしか判別できなかった。更に、部屋の左の壁際には、若い女性と中年男性が椅子に座り、遅れてきた訪問者を歓迎するわけでもなく、じっと信一郎の方を見ていた。
彼らに気付いた信一郎はぺこりと会釈をした後、ピクリとも動かない面接相手の方へ歩き出した。部屋の明るさにも慣れ、面接相手が男性であること、奥に長机と椅子が置いてあることが分かった。
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