第1章

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 整った顔の好青年に著作を褒められると、信一郎は悪い気分にはならなかったが、その笑顔は人口筋肉によって作られたモノでしかない。 「読んだのではなく、ダウンロードしたの間違いでは?」 「いえ、本当に読みましたよ。ダウンロードすれば一瞬ですが、私は無駄な時間を楽しむのも好きなんです」  皮肉交じりの質問に、シュウは明朗快活に答えた。 「そんなもんなのかね。俺だったら、そんな選択はしないけど。まあ、ロボットが椅子に座っている時点で、俺には理解不能なんだが―――」  その会話の途中で、壁際の女性弁護士が手を上げて、 「すみません、それは差別的発言に当たるので訂正をお願いします」  と発言した。その予想通りの反応に、信一郎は「どこが?」と確認すると、 「彼を人間と同様に扱ってください。それにロボットではなく、フォースパーソンという言葉を使うようにしてください」  と、女性弁護士は要求してきた。  ―――人型ロボットにも人権を。     
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