第1章

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 AIとロボット工学の発達によって、様々な場所で人型ロボットが接客を担うようになり、彼らが人工筋肉で豊かな表情をしだした頃から、一部の人権派が「人型ロボットにも人権を」と叫けび始めた。そして、最近では名称をロボットではなく、四人称という意味のフォースパーソンに変更するように主張していた。しかし、その考えは世間的にはまだ浸透しておらず、未だにヒューマノイドやアンドロイドと呼ばれることが多いのが現状であった。  真逆の立場である信一郎にとって、そういった運動は弁護士の新しい飯のタネ程度にしか思っていなかったが、実際関わってみるとかなり面倒であるということが分かった。 「はい、はい」と適当にあしらった信一郎は、やっと面接を開始する。 「シュウ、キミはロボットと呼ばれることはどう思うかな?」 「特に何も。なんて呼ばれようが、僕は僕ですから」  この答えには、信一郎が知ろうとしたすべてが集約されていた。最新のAIには個性がある。シュウも例外ではなかった。過去に何度か対面したことがある信一郎は、特に驚きはしなかったが、AIが個性を獲得したプロセスを知っているため、若干の気持ちの悪さは拭い去れなかった。 「では、最初の質問。キミは人を殺したいと思ったことがあるか?」 「いつも思ってますよ。人間なんて邪魔な存在は全滅すればいいと………」  突拍子もないシュウの回答に、人間たちの身体が一瞬固まった後、 「もちろん冗談ですけどね」  と、シュウは笑っておどけた。 「まじめに答えてくれないかな。俺も仕事で来てるんでね」  口調を強めた信一郎に、シュウの人工筋肉が収縮して表情が変わった。     
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