第1章

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「すみませんでした。場を和ませようとしただけなんですが……。質問の答えとしては、殺人衝動の経験はありません――ですかね」 「では、フォースパーソンが殺人をする可能性は?」 「それは坂本さんが一番知っているのでは?」  質問を質問で返されて、信一郎は苛立つのと同時に、AIの会話の多様性に感心もしていた。 「確かにそうだが、この施設はそうならないためのものだろう」 「それは、この施設が機能していればこその話ですよ」 「機能してないと?」 「だから坂本さんが呼ばれたのではないのですか?」  また質問で返された信一郎は、尋問されている気分になったため、話題を変えることにした。 「ところで、キミは夢を見たらしいね」 「はい」 「電気羊の夢でも見たのかな?」 「ディックの小説ですか、その冗談を聞くのは、これで五回めですが、あなたぐらいの年齢の人が言ったのは初めてです。古いSF小説が好きなんですか?」  AIが見る夢と聞いて、最初に連想したSFネタが、五回目だと指摘され、信一郎はばつが悪い思いをした。それを隠そうと、目線を資料向けたまま次の質問をした。 「それで、それは何回くらい?」 「この一週間で3回です。それらの夢はすべて断片的で、連続性はなく時系列もバラバラで、まるで他人の人生の総集編でも観させられているようでした」     
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