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「すみませんでした。場を和ませようとしただけなんですが……。質問の答えとしては、殺人衝動の経験はありません――ですかね」
「では、フォースパーソンが殺人をする可能性は?」
「それは坂本さんが一番知っているのでは?」
質問を質問で返されて、信一郎は苛立つのと同時に、AIの会話の多様性に感心もしていた。
「確かにそうだが、この施設はそうならないためのものだろう」
「それは、この施設が機能していればこその話ですよ」
「機能してないと?」
「だから坂本さんが呼ばれたのではないのですか?」
また質問で返された信一郎は、尋問されている気分になったため、話題を変えることにした。
「ところで、キミは夢を見たらしいね」
「はい」
「電気羊の夢でも見たのかな?」
「ディックの小説ですか、その冗談を聞くのは、これで五回めですが、あなたぐらいの年齢の人が言ったのは初めてです。古いSF小説が好きなんですか?」
AIが見る夢と聞いて、最初に連想したSFネタが、五回目だと指摘され、信一郎はばつが悪い思いをした。それを隠そうと、目線を資料向けたまま次の質問をした。
「それで、それは何回くらい?」
「この一週間で3回です。それらの夢はすべて断片的で、連続性はなく時系列もバラバラで、まるで他人の人生の総集編でも観させられているようでした」
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