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さすがに僕も、文句を言いながら早足で中庭を歩いていた。
「あら? どうかしました?」
目当ての女性は、建物の前でファイルを抱きかかえるようにして待ち構えていた。つまりさっきからの僕と少女たちのやり取りをしっかりと見ていたということだ。
今まで、名ばかりの管理官だと思っていたけれど、改めて真正面から見据えてみると僕の視線にも全く動じない。ただ者ではないのかもしれないと始めて思った。
「これは何かの手違いなのではないでしょうか」
僕は努めて感情を押し殺して冷静な声を発して、尋ねた。
「いえ、何も間違っていませんが」
「僕は、ジュニアハイスクールの女子クラブに教えにきたつもりはありませんが」
まだ、僕は冷静に抗議をしていた。
「えーと、イエンス・ボーアさん……でしたっけ。民間軍事会社から軍事教官としてこちらには赴任した」
『何か間違っていますか?』と彼女は、にっこりと微笑んで確認した。僕について書かれているらしいファイルをしまうと真っ直ぐに僕の方をみつめた。二十代の真面目そうな事務方の女性に見える。でも、わざとらしいくらいに細めた目は、周囲が歪んでいない。この眼鏡は伊達眼鏡だということが分かると、やはり只者ではない匂いがしていた。
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