第一章其の二 教官の記憶

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「鉛の弾も禁止、ミサイルも禁止。それから武器だけじゃないわ……油を爆発させて飛ぶようなエンジンの戦闘機などもこの国ほとんどの地域の上空一万メートルを飛ぶことは禁止ね。いかなる状況でも」  思考が中断している僕に向かって、わかりやすく女性は解説してくれた。  『あり得ない』と思ったことをさらりと告げられて、僕は固まってしまう。 「人間の損害より、珍しい動物の方が大事。そういうことか?」 「まあ、そうね。国際世論とやらが決めたことですけど」 「もう戦争なんてやめたらどうなんだ?」 「国際世論は、小国の内乱なんて興味がないことくらい分かっているでしょ」  僕の皮肉めいた提案は答える価値もなさそうに、首を軽く振られて却下された。まあ、誰もが考えて、でも考えないようにしていることなのだろう。 「細身の少年でもいいのではないですか?」  色々諦め始めた僕は、気力もなく聞いてみた。  男女では、やはり体力が違う。パイロットが操縦桿を傾けただけで、簡単に動かせるわけじゃない。  女性パイロットはいないわけではないけれど、少女ばかりなのは不自然な気がした。  ふと見ると、この事務官のような女性はたくましくは見えないけれど、服から除き見える腕の筋肉はすばらしく引き締まっていた。 「男の子たちは、環境に優しい戦車部隊に乗っています」 「おぉ」  この国の大人は全て呪われればいいと、僕は心の底から願った。
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