第一章其の三 教官への記憶

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「やだなー。もう、マルティーヌさんってば下品」 「西部の人は、言葉が直接的すぎるのよ」 「何ー? お姉さま欲求不満?」  ティルデたち、賑やかなグループから茶化すような声が聞こえてみんな笑っていた。 「笑い事じゃないわ。切実よ。死ぬ前に、セックスくらいしておきたいと思わない?」  冗談だと思っていたら、割と真剣な口調に年下の乙女たちは顔を見合わせて困惑していた。 「死ぬ……って。私たち実際に戦場に行くなんてことは無いでしょ?」 「せめて、恋くらいしたいとか言ってよ。お姉さま」  怯えながらも、笑いに変えようとする年下の子たちの方が大人なのかもしれないと考えながら私は何も言わずにただ眺めていた。 「何を甘いこと言っているの? 私たちなんかにわざわざ訓練させたところで、本当に戦力になるだなんて思っているの?」  その発言に私はちょっとムッとして、マルティーヌを睨んでいた。だけど、あいつは気にした様子もなかった。 「私たちなんて宣伝材料よ。ちょっと飛ばせるようになったら、祖国のために立ち上がる勇ましい少女たちって華々しく宣伝されるの」     
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