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お世辞でも社交辞令でもなくヨーコはそう言った。自分だったら戦車ではないにしても軍用の車に飛行機で近づくことなんて、想像するだけで震えてしまう。
「まあね。クシャウーロの戦いで戦車部隊を叩いた話は本当よ。冗談抜きでちびりながら戦っていたけどね」
ヨーコの尊敬に満ちた眼差しを感じたのか、ティルデはいい気分で語り続けていた。
「あ、あの。それで、特にお聞きしたい話がありまして!」
話を遮るのは失礼だろうかと遠慮していたけれど、このままだとティルデのオンステージは終わることはなさそうな気がして勇気を出して呼びかけて見た。
「何?」
部屋の中が急に静寂に戻って、立ち上がって語り続けたティルデの顔がヨーコの方を見下しながら向いた。良い気分の演説を途中で遮られて、不機嫌な目つきのような気がしてしまうのはヨーコの思いこみだろう。
「教官のお話が特に聞きたいと思っていまして!」
まるで直立不動で敬礼するかのように、背筋を伸ばしてヨーコは返事をした。
「教官? ロイ・クレイバード教官のことでいいのかしら?」
「はい。その通りであります」
変な軍人みたいな言葉遣いになって自分でもおかしいと感じていたけれど、今さら引き下がるわけにはいかないとヨーコは気合いを入れて答え続けた。
「ふーん。ちなみに何でロイ教官に興味があるのかしら?」
「一目惚れであります」
「へ?」
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