第一章其の三 教官への記憶

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第一章其の三 教官への記憶

「教官は、隊員の少女たちみんなの憧れでしたね」  戦場での出来事を熱いトークで語ったあと、ティルデは紅茶を飲んで一息ついていた。  ちょっと天井の方を見上げているようにしているのは、教官の姿を思い出しているようだった。 「確かに格好いいですよね」  ヨーコにとっては、わずかに残っている写真を見ただけの存在だったけれど、ヘルメットを脇に抱えて戦闘機に乗り込む姿は印象的で記憶にいつまでも残り続けていた。 「まあ、口では事あることに突っかかって、文句を言う子もいましたけれどね」  最初は反発していた女の子たちも、最後にはみんな教官のことを好きになっていたと笑っていた。それは、ティルデ自身のことも含めているから笑っているのだと気がつくのにしばらくの時間がかかった。 「まあ、祖国のためとか女性の解放のためとか、実際にはほとんど考えていなかったわ」  一番有名な映画のクライマックスで、様々な地方から集められた隊員たちがティルデの説得で結束した。その時に熱く語った言葉をティルデ本人が笑い飛ばしていた。     
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