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第一章其の一 ティルデの外遊
取材場所に指定された場所はこの街で一番高級と言われるホテルだった。
「なるほど、きれいね」
ヨーコ・バートランドは、この街に何年も住んでいながら、こんな高級なホテルには縁がなくて近づいたこともなかった。
少し強い海からの風に髪を抑えながら、周囲を見回す。街の中心からは少し外れた高台で、見慣れている建物や海のはずなのに別物の絶景のように見とれていた。
「本当にあんな有名人に会ってもらえるのかな……」
さすがに普段、大学に行くようなカジュアルな服装ではなかったけれど、持っている服の中で一番綺麗な服、アルバイトの面接の時に来ていくスラックスとジャケットでもさすがに場違いな気がしてきてしまいながら、ホテルを見上げた。
一人で来てしまったことを少し後悔していた。あの馬鹿教授を無理矢理にでも連れてくればよかったなどとぶつぶつ呪いながら、玄関前でうろうろしていた。
「でも、あの人の話を直で聞きたい」
こんな機会はもうやってこないかもしれないと気合いを入れてホテルのフロントに足を踏み入れた。
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