第一章其の二 教官の記憶

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第一章其の二 教官の記憶

「まず、ロイ教官はクローン人間ではないわ。それは分かってる?」 「はい。最初の頃に広まった間違ったイメージだということは知っています。」 「よかったわ。最初の映画『第307飛行隊の奇跡』が有名になったのはいいのだけれど、未だに世間ではあのイメージが強いのよね」  ティルデは両手を広げて肩をすくめていた。お手上げだと言いたいらしかった。 「クレイバードさんたちが優秀なパイロットで、教官含めてクローン人間だと思われていた。それはまあ、仕方ないと思う。それは、いいのだけれど……」 「何で! 教官があんなカタコトで話すロボットみたいなキャラクターになっているの!」  意味が分からないわとティルデは憤慨していた。恐らく彼女は、もう何千回と話したことなのだろう。それでも、今なお、熱く語るその姿にヨーコは驚きはしつつも、むしろ感動していた。 「ブリットさんの書かれた本を読みました。『エリーロの空を駆ける』という映画も大好きで、何度も見ました。」 「『エリーロの空を駆ける』は、全然鳴かず飛ばずな映画だったのによくこの国で上映したものね」     
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