無口な君の

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 廊下から男子たちのでっかい声。  ガラスの向こうに原田君の顔が見えた。  大きな声で話している男子たちの中に入って、なんだか頷いている。 「お、原田君じゃん」 「う、うん」  友達に言われて、意味も無く今気付いたかのように振る舞ってみる。  すぐに目に入っていたのがバレたら恥ずかしい。 『無人島に何か一つ持ってくなら何にする?』 『俺、エロ本!』 『ばっかじゃないの!!』  バカみたいな笑い声。  なんていう話をしてるんだ。  しかも廊下中に響いている、どころか教室の中にいる私たちにまで聞こえる声で。  原田君は、困ったように笑っている。 『原田は何持ってくんだよ』  原田君は答えないで、やっぱり困ったように笑っている。
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