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――間をとってもいいんじゃないか。猫伏、何故お前が間をとらない。お前は、そういう役割じゃないのか――
続く二番打者には四球。これで満塁。たまらずタイムをかけたくなるが、グッとこらえる。まだ秋じゃないか、中田はそう自分に言い聞かせる。一度六回に肩を作らせた杉坂にもう一度肩を作らせる。ブルペンがシュウの視界に入ることも考慮した。
三番の角には、ストレートの四球。もはや誰がどう見ても、おかしい。
捕手の高木がようやくタイムをとってマウンドに向かう。マウンド上で一言二言シュウと言葉を交わし、カチャカチャと防具を鳴らしてホームへと戻った。
中田には見つめるより、他はなかった。
そして迎えた四番の中村。
中途半端な高さに入ったスライダーが、スコアボードを直撃した。
センターを守る青田は、一歩も動かない。そんな打球だった。
中田はようやく重い腰を上げて、審判に投手の交代を告げざるを得なかった。
呆然とするシュウから、杉坂がボールを受け取る。
それがシュウの最後の登板になった。
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