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 しかし結果は、県大会準決勝敗退。関東大会に駒を進めることはできなかった。  準決勝前日、幹部であるシュウ、青田、猫伏を中田は放課後第三予備教室に集めた。  予備教室に入ると、既にユニフォームに着替え一番前の席に座っていたシュウが、「お願いします」と立ち上がって挨拶をした。  そんなに鯱張らないでください、と何度言っても態度を崩さない。留学生だからということより、生来の性格によるところが大きいのだと結論付けたのは最近だ。 「ハカセ、今日の練習は高木にまかせているアル。それでよろしかったアルか?」  それでいいですよと答え、教壇に立つ。 「今日は何の話アルか? 次の試合のシミュレートをまた練るアルか?」 シュウが中田に尋ねた。  試合のシミュレート。このチームの躍進の鍵はそこにあったと中田は考えていた。  試合のシミュレートなどなんの役にも立たないと言う人も多い。実際、ほとんど役に立たなかった試合も中田は数多く経験している。  ただ、このシュウを擁する大宮技術高校ではそれは当てはまらなかった。正確無比なコントールがあれば、高校生の試合のコントロールなど造作もないことだった。 「野球は確率のスポーツだ」  中田は言った。常々言っている。     
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