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そこから虹色の燐光が溢れ出し、深海魚に似たグロテスクな物体が飛び出す。
最新技術の塊である<中継車>だ。
ずんぐりとした胴体から後ろに向かって伸びる触手を蠢かせ、見上げる観客達の上を暫く泳いで光子フィルターを発生させた後、<中継車>はちょうど指輪の上で動きを止めた。
この異形のオタマジャクシが、宇宙戦艦と同等出力の縮退炉を搭載し、最高時速50万kmで飛び回れる翼を与えられたのは、レースのあらゆる決定的瞬間を確実にカメラに撮る為だからだ。
アナウンスが流れる。
『一時的に映像が途絶えていますが、間もなく先頭集団の超次元アウトが完了します。
給水地付近の皆様はお気をつけ下さい。
さて、親愛なるバレットラインファンの皆様。
いよいよこの時がやって参りました。
今回も全宇宙最速の称号を得るために3258チームが参加。各惑星で行われたグリーンウッド予選を勝ち残った126チームの中から、バレットライン決勝レースへノミネートされるのは僅か7チームのみとなります。
先週行われたレッドフレイム予選でとうとう6チームまで絞られました。
この意味が分かりますか。
そうです。いよいよです。
このレースを終えた時、いよいよ最後の1チームが決まるのです』
アナウンスが終わる。
その直後。
ずん、と大地が跳ねた。
喧噪がピタリと止む。
空を浮かぶリングが四つの弧に大きく分かれる。
来た、と誰かが呟いた。
マシンが来る。
リングの中央に虹色の光が集まり出す。
大地の震えがどんどん激しくなる。
怪物がやって来るのだ。
恐るべき速さで空を舞い、地を駆ける怪物達が。
その瞬間を誰もが待ち望んでいた。
そして、閃光が弾けた。
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