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第1話 魔女の円卓
その部屋では四人の魔女が神妙な顔をしながら円卓を囲んでいた。
この部屋には選ばれた者以外誰も入室することはできない。
彼女らは危機を迎えていた。
「どうすんのよ」
西の魔女が口を開いた。
トンガリ帽子に黒地のワンピースという地味ないでたちの彼女は先ほどからしきりに爪を噛んでいる。
分厚いメガネの奥にあるチョコンとした目の下にも、深いクマがついていて、カリカリした調子で喋っておりいかにも余裕が無かった。
「私達の……『円卓』のありとあらゆる資産が『宵闇の魔女』によって攻撃されている。大魔女様になんて申し開きするのよ。こんな失態がバレれば『磔の刑』だけでは済まないわよ」
「状況は極めて深刻ですね」
南の魔女が憂鬱そうに、しかしどこか悠長な様子でため息をつきながら言った。
彼女は頬杖をついてその憂いを湛えた顔から溜息を吐き出した。
その陰鬱で怠惰な様子にも関わらず彼女の様子は優美な印象を与え、憂鬱な表情も彼女の美しい容姿をより際立たせた。
緩やかにウェーブした金髪、ゆったりしたローブに、身につけられた指輪やネックレスと言った光り物も、西の魔女とは違って経済的余裕があることを伺わせた。
西の魔女と一致しているのはトンガリ帽子くらいだ。
一本一本整えられた髪と玉のようにきめ細やかな肌。
この危機の際にも余念なく手入れして外見を整えている有様は、まるで中身よりも外見の方が肝心だと言わんばかりだった。
西の魔女は兼ねてから南の魔女のそのような態度にイライラしていた。
「このままでは来期の私の収入はドン底だわ。長年の営業努力の結果、ブラックコインがようやく流通しつつあると言うのに」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
西の魔女が我慢しかねたかのようにドンと机を叩いた。
「元はと言えばあんたが『宵闇の魔女』を挑発したせいでこんなことになってるんでしょう? 責任取りなさいよ」
「それを言えばそもそも宵闇の魔女をここから追い出したのは西の魔女、あなたじゃないの」
「なっ。あれは宵闇の魔女が先に私を挑発してきたからで……」
「争いは同じレベルの人間同士でしか発生しないという事ね」
西の魔女は肩をワナワナと震わせて唇をひきつらせる。
彼女が激情に駆られて爆発する間際の仕草だった。
室内にうんざりした空気が流れる。
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