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「そういえば、タツミ以外に龍はいるの?」
まさかとは思うけど、実は龍だらけの大学だったりしないよね。
そんな想いで放った質問に、タツミは苦笑いで応じた。
「残念だけど、私以外のほとんどの龍は人間に興味がないからね。私が知る限り、にはなるけど、私みたいに人に紛れて暮らしてる龍はいないね」
「ふーん……そうなんだ。寂しくないの?」
「龍は人と成り立ちが違うから、同胞が近くにいなくても寂しいという感じはしないよ。同族同士で一緒にいること自体稀だし、それに私には君みたいな同居人や友達がいるから」
そういって笑うタツミ。タツミの表情もずいぶんわかるようになってきた。最初は龍の表情なんてわからないと思っていたものだけど、タツミは言葉での意思疎通ができる分、いまどんな気持ちであるかがよくわかるから、表情も割とすぐわかるようになった。
飼い犬とか飼い猫の表情がわかる、と豪語する動物好きの友人の言葉も、いまでは誇張では無いんだと理解できた。
「あ、そうだ。タツミに言っておかないといけないことがあるんだった」
私は思い出したことがあって、タツミに声をかける。
「実は、今度うちのお母さんが、寮に様子を見に来たいって言ってて……タツミにも挨拶したいんだって。次の火曜日、タツミは寮にいられる?」
「大丈夫だよ。その日は確か本の返却日なだけだから、新しい本を借りて部屋でゆっくりしようと思っていたし」
学問に興味があって大学に通いまでしているタツミは読書家だ。嘘かほんとか、大学の図書館にある蔵書の半分は読んでしまったとか。この大学の図書館は普通より遙かに大きいことで有名だから、それがどれほどすごいことかは私にもわかる。
「オッケー。じゃあ、その日で大丈夫だってお母さんに伝えとくね」
「忘れないようにスケジュールアプリに入れておくよ」
タツミはそう言って、尻尾を一振りすると、机の上に置いてあったスマホをふわりと自分の傍に浮かばせ、アクセサリーのようにぶら下がっているタッチペンを器用に操り、フリック入力もこなしていた。
「……タツミって、イメージと違って機械音痴とかじゃないんだよね」
「最初は慣れなかったけど、教えて貰ったからね」
そういえばギャル文字も打てるんだった。
タツミからそんなメールを初めて受け取った時の衝撃を察して欲しい。
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