そのルームメイトとの出会い

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 タツミは普段から勉強家なだけあって非常に覚えがいい。  本人曰く「何事も興味を持って接していれば覚えられるよ」ということだったけど、私にはとても真似できそうにない。 「……タツミはいっぱい勉強してるけど、何か目的があるの?」  タツミの用意してくれた晩ご飯を食べながら、そう聴いてみる。  タツミは自分用に用意した味の薄い料理を食べながら応えてくれた。 「強いて言うなら、学ぶことそのものが目的だね。知らなかったことを知るのは楽しいよ」 「人間の文化ってそんなに面白い?」 「もちろん。まあ、私はそれ以上の目的を持ち得ないってことはあるけど、学問とは本来そういうものであるべきだとは思うよ」 「学びたいから学ぶってこと?」 「そう。就職に有利だとか、技術の発展に貢献するとかも大事なことではあるけどね。知りたいから知る、作りたいから作る、いまは余裕のある世界なんだし、それくらいのスタンスで学んでもいいと思うよ。……まあ、私は龍だからね。人として正しくないのには目を瞑ってね」  時々、タツミはそういって達観したように笑う。  人の営みに龍の自分が関わるのは良くないと考えているみたいだ。  頭の良くない私はそういうとき、タツミになんといってあげればいいのかわからなくなる。タツミのかつてのルームメイトなら、もっと上手くタツミに何か言ってあげられるんだろうか。 「……そういえば、タツミってラインはやってないの?」  話を変えるために、そう聴いてみた。タツミとの連絡はメールか電話で、チャットアプリは使っている様子がなかった。 「うーん、苦手なんだよね。アプリって。だってほら、なんか情報抜かれたりするんでしょう?」  ふわふわ浮かんで来たタツミのスマホの画面を見てみれば、確かにほとんどアプリが入っていない。公式が出しているアプリばかりだ。寮から近いスーパーマーケットのアプリがちゃっかり入っているのはタツミらしいというかなんというか。 「便利だよ? メールと違って複数人とやりとりしやすいし。もし電話番号をずっと変えてないなら、昔の友達ともまた繋がれるかも」  それが嫌だって人もいるみたいだけど、と続ける前に、タツミがその長い身体を伸ばして私の顔を覗き込んできた。タツミの厳めしい顔にもだいぶ慣れてきたけど、急だったのでさすがに驚いて身体を引いてしまった。  タツミの目が、爛々と輝いている。   
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