第一章 はじめましては突然に

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第一章 はじめましては突然に

「あー暇だー!」    気怠さと苛立ちをまぜこぜにしたような声をだして、座席の背もたれへぐでっと身体を預け天を仰いだのは一人の男だ。    歳はぱっと見では判別できそうにないが、二〇~三〇といったところだろうか。  少なくとも少年ではないということだけは確かである。    服装は宇宙服とウェットスーツを足して二で割ったような黒のボディスーツ。  顔つきは至って普通であり、格好いいというわけではないが、かといって不細工というわけでもない。  ただ、強いて言うなら幸が薄そうとか、苦労人気質(?)のようなものが感じ取れるぐらいだろう。その証拠――と言っていいのかはわからないが、若干頬がこけている。    本人の言葉もだが、全身で暇をもてあましていると表現してもいいほどに、大の男が自らの四肢をダラリと垂らしている様はいっそ清々しさすら感じてしまうほどだ。 「はあ、またですかー?」    そんな彼の様子に見かねたのか、彼の近くの座席に座る女性――いや、少女? がため息とともに苦言を呈す。    彼女も男と同じボディスーツを着ていた。     
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