第一章 はじめましては突然に

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 ただし、男が来ている物とは違い、ボディスーツのカラーが違う。男の黒に対し、少女が着ているのは赤――朱色と呼ぶのが正しいだろうか――だった。    さらに、よく観察してみると男の物と若干意匠も異なっているようだ。男の着ているボディスーツの方が二の腕の所にエンブレムが入っていたり、胸当てがベストのようになっていたりしている。    一方少女の方にはそのようなエンブレムは無く、胸当てもベストのようにはなっておらず、胸(心臓)を守るためだけのもの。全体的に男のボディスーツよりも簡素化されているようだった。 「いや、暇って言っているのは俺だけじゃないだろ? 他のヤツらだって散々言っているだろうが……」 「それは……そうですが」    男は態勢を変えず顔だけを少女へと向けて、悪びれた様子もなく言い放った。それと同時に視線を同じ空間にいる他の人間へと向ける。    男の視線の先にいるのは、先の彼女と同じ意匠のパイロットスーツ(カラーは異なっている)に身を包み、投影された電子モニターのまえで作業する少女達。    歳も同じくらいだろうか。男と比べると親子……とまではいかないものの、姪と若めの叔父ぐらいの差はありそうだった。    話の矛先が自分たちへと向けられたと理解した彼女たちは、作業の手を止めると顔を見合わせる。 「そりゃ、ねえ?」     
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