第一章 はじめましては突然に

6/86

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
 何事もないように肩をすくめるリョウを見て、ある意味で戦慄するリオ。字面だけみるとかっこよく見えるが、実際に言っている内容はただのゲーム廃人だ。 「で? 結局やるの? やらないの?」 「やりません」 「……あっそ」    端からやるとは思っていなかったのか、リオの返事に気を悪くする様子もなく、リョウは一つのびをすると先ほどよりはましな態勢に座り直す。    リョウは視線を艦橋から見える暗闇――宇宙空間へと向けるとポツリと独り言を漏らすかのように語り出した。 「大体さあ、いい加減他の艦と出会ってもいいと思うんだよねー」 「そうですね。一隻とも出会いませんねー」 「船団が離ればなれになってから何年だっけ……一年くらいか?」 「約三年ですね。大分体内時計がいかれているようで」 「こーんな殺風景なとこを毎日、毎日進めば体内時計の一つや二つ摩耗するっての!」    時間自体は出発時点での地球標準時を元に艦内時計も合わせており、確認しようと思えばいつでも確認できるはずなのだが、この男はどうやら全く見ていなかったようである。  こんなのが艦長でいいのかとリオや他の乗組員も思わなくはないのだが、現実問題として特に何も起きていないからいいのだろう。多分、きっと、おそらく、といった副詞が頭につくが……。     
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加