第一章 はじめましては突然に

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「いや、いい。一月前に全身検査受けて『問題なし』って結果出たばっかだし……そういえばあの『ワームホール』って原因不明なんだっけ?」 「それもど忘れですか?」 「どっちかっつーと確認?」 「なぜ、疑問系なのでしょう?」    こんな風にやりとりをしていると艦橋にいる他の乗組員(主にリオが先ほど叱りつけたオペレーター三人組)からの視線が妙に生暖かいというか、哀れんでいるような複雑なものを感じるが、居心地悪そうにしているリオとは違いリョウは気づいていないようで、話を続ける。 「いや、『ワームホール』について何かわかったことがあればさっさと船団に合流できるかと思って」 「まだ報告は上がっていませんね。解明できたらとっくに報告に来ていると思いますよ」 「だよな」    二人の言う『ワームホール』とはこの『オオハヤブサ』が船団と離ればなれになる直接の要因となったものだ。別にこの艦長がちゃらんぽらんなせいだから、ではないのである。    外宇宙に出てしばらくたってからだろうか、唐突に艦内の機器が異常状態を示したかと思えば、船団前方の空間が歪みその場から離脱することもかなわずに全艦が呑み込まれてしまったのだ。    そして、気づいたときにはどこかわからない宇宙空間を漂っている自分たちがいたというわけである。     
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