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「何も……ない……」 「そうね。あなたが見ていたものは全てAIが拡張した偽物の現実のなかにしか存在していないのよ。あなたたちは手袋を絶対につけさせられていたでしょう?あれは触覚を再現するために必要なためよ」 映像の中の主人公が真っ赤な建物のドアを開き家に入る。すると真っ赤な壁の建物の中で不気味な白い人形が出迎える。 「おかえりなさい」 それは、母親の声。主人公は「ただいま」とこたえていた。 「……これが、現実だっていうのか……?」 「そうよ。あなたたちは人工知能によって生かされ、管理され、教育されて支配されている。そしてそれが今の地球人の姿なのよ」 「嘘……だ」 「本当の事よ。私たちは地球の人工知能の動きには敏感でありたくてね。奴等が人間の遺伝子を使い何かしていることに気付いて調査をしていたのよ。火星での生活もようやく安定して地球の動向に目を向ける余裕が出来てきたしね。逆に奴等は火星に向ける目を持たずにいた。彼等はまだ防衛機能の構築に尽力しているみたいで侵略とかは考えていないみたいだったから、早速地球にロボットを送り込んでデータを集めたわ」 「それが……獣の正体……」 「ええ。あなたたちには人工知能が貼ったバケモノのテクスチャが見えていたようだけどね。ちなみにあなたの町の他にも沢山の場所に私たちはロボットを送り込んだわ。おかげで沢山のデータを収集する事が出来た。ま、火星が生んだ天才のおかげね。地球の人工知能の使う暗号を容易く解析してくれたんだから。っとそれはどうでもいいか」 少女が言葉を羅列しきる前に主人公は俯き顔を曇らせていた。 「沢山……沢山人が死んだってことですよね」 「そうね」 「これからも……」 「それはあなた次第かしら」 「えっ」 「単刀直入にいうわ。私たちに協力して」 「協力って」 「ちょっと散歩でもしましょうか」
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