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「その花びらの色は人間の血の色を薄めた色らしいよ」 今まで一度も入ったことのない学校の図書室にまで行き僕はその真偽を確かめた。 僕は嘘をつかれていた。 翌朝、いつもと同じ場所に行くと平気な顔で嘘をついたあいつがいた。 「調べなければよかったのに」 「あなたがそれを信じている間は、この花びらは本当に人間の血の色であったのよ」 そうやって難しい言葉で煙に巻く、嘘は嘘さ。 「じゃあこんなのはどう?」 「この下には人間の死体が埋まっているのよ」 それも嘘だ。 「あら、今度は調べないうちから嘘呼ばわり?」 「もし本当だったらどうするの?」 「罰ゲーム。もしこれが嘘だったら、もうあなたとは会わないわ」 「その代り本当だったら、またここに、また私の話を聞きに来てね」 わかった、調べてやるよ 家から持ってきたスコップで根本を全部掘り返してやる。 数十センチの穴の中には、ただ土が詰まっているだけで、やっぱり何もなかった。 やっぱり嘘だったんだ。 振り返るとその人はもういなかった。 落ちていく花びらが耳元をすぎたとき、あの人の声が聞こえた気がした。 「あーぁ、ばれちゃった」 それ以来、ずっとあの人のことは見ていない。 年々その記憶は薄れていき、夢か幻のようなものだったんだと思うようになっていった。 あの場所で14歳の少女が失踪したという古い新聞記事を見たのはまったくの偶然だった。 本当は埋まっていたのかもしれない。 でも、年月が過ぎていくうちに、埋まっていたものは消えてしまったんだ。 今年も咲いた桜の花を見上げていると、ほんの少しだけ残念な気持ちになった。 ほんの少しだけ。 「随分と久しぶりね、でも来てくれて嬉しいわ」 「それじゃあ次は───どんな話が聞きたい?」 そうやってまた、あの人は平気な顔で嘘をつくんだろうな。 今もこの桜の木の下で。
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