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ある日、廊下で水嶋が泣いていた。
「どうしたの?」
僕は気になって声をかけると水嶋は目元を擦り笑った。
「平気だ。気にしないでいいよ」
そう言って水嶋は僕の腕を掴んで歩きはじめた。
「水嶋、僕でよければ聞くよ?」
心配だったので声をかけると水嶋は驚いた顔をしていた。
「ありがとう、平気さ! 心配させてごめんな!」
目を赤くしたまま水嶋は僕の頭を撫でてくれた。
本当は知ってる。
さっき好きな先輩に告白していた事。
本当は知っている。
その告白に失敗した事。
だけど僕は言わない。
だってこれ以上水嶋の涙を見たくないから。
「水嶋は水嶋でいいんだよ。僕にそう言ってくれたでしょ? 僕はどんな水嶋でも好きだよ」
告白みたいだと言った後に気が付く。
だけど水嶋は気が付く事がなかった。
「ありがとう、橘。珍しくカッコイイじゃん。バカ」
そう言って水嶋は泣き始めた。
だから僕はハンカチを差し出す。
水嶋が僕の前で泣くとは思わなかった。
諦めた恋心が変わった。
カッコイイ女性が僕を見てくれるとは思わなかった。
僕の気持ちは変わった。
「水嶋、言ってくれたでしょ、初めて会った日」
彼女に初めて会った時、言われた言葉を忘れない。
『可愛いものが好きでどこが悪い?』
そう言った彼女の言葉が俺の胸がキュンとした。
今日から水嶋のためにかっこいい男性になるんだ。
俺の名前は、橘 春利。
可愛いものが好きで、水嶋を好きな大学生。
『可愛い物が好きでどこが悪い?』
今日から一人称は僕から俺に変わります。
守りたい強くて優しい女の子がいるから。
過去の俺を認めてくれた水嶋のために精一杯頑張って先輩を殴りにいきます。
水嶋を弄んだ先輩は運動部で体つきが良くて、強くそうだけど俺は一度殴らなければ気が済まない。
水嶋は最低な先輩の一言に涙を流しながら優しくさようならを告げた。
そんな水嶋に俺はもっと惚れる。
気高き女の子に俺は認めて貰うところから始めないといけない。
「水嶋が好きでどこが悪い?」
++++end
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