第1章

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「我々はこれでも経験豊富だからね。はじめてで戸惑うこともあるだろうけど、慎重に行動すれば大丈夫だから」 「は、はい」  それで、少しミナミは救われる。  ダイバーの仕事について、ネットでもテレビでも悪評はすさまじい。  ミナミが考察した恐怖や金に目がくらんだってのもあるが、それ以上に、死傷者数は毎回ニュースになるのが大きい。送り出すのはどれも民間の企業で(これが国家だったらもっと問題になっていたろう)ひどいとこでは労働環境が最悪で、その結果全滅というケースも少なくない。  いや、全滅しなくても死んだりしなくても、負傷して一生ものの傷を負ったという話をよく聞く。  現代は義手や義足などの医療も進んでいて――その業界の常連は、言うまでもないがダイバー達である。 (だ、大丈夫だよね。高田さんがこう言ってくれるし)  ちらっ、と彼女は日向のことも見る。 (ひ、日向さん……ヒナタさん、た、頼りないけど)  つい、比べてしまう。いや、十七歳と四十越えた大人を比べるのもどうかと思うが、命の危険性がある状況だ。しょうがないのかもしれない。 「……ふー、ふー」  思わず、何度も息を整えるミナミ。  ダイバー達はチームごとに穴に向かい、次々と入って行く。 「ふぅ、大丈夫だよミナミさん。ぼくらがついてるから、心配しないでね」 「あ、は、はい」  高田がもう一度、ミナミに声をかける。 「大丈夫だから、大丈夫だからね」 「え、はい」  何度も彼女に声をかける、 「大丈夫、大丈夫だから……」 「え、あ、その」 「………」「………」  ミナミは知らないが、このとき、ヒナタとナツミは何かを感じ取っていたようだ。いや、それも確信ではなかったのだが。 「次、十一番隊!」 「はい! はい、ぼくらです!」  高田が応える。  いよいよ、私達の番だとミナミは握り拳を強くする。  四人して穴に入った。  004 「……さて、着いたかな。それじゃ、行」「危ない」  うわっ、と遅れて声をあげる高田。  彼はヒナタに肩を押され、倒された。普段なら、何するんだヒナタと叱責するとこだが、さっきまで高田がいた場所に一筋の光が走り、後方の壁を貫いていた。 「え」
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