第1章

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 昔、アフリカにいた首長族がテレビで話題になったことがあるが、それよりももっと長い、全体的に。足も腕も、胴体も首も、全てが天井につきそうなほど長かった。そして、長すぎてゴムのように細くなってしまっている手足は意外と強靭なようで、ダイバーの人体を豆腐でもつかむようにグチャグチャにしていた。そして、捕食していた。 (仲間内では、『ナガイ』と呼ばれてるっけ)  ヒナタは彼等の視線から少しだけずれて、そこから銃弾を当てる。たった一発、それが頭に命中した。一気に、二体を殺した。 (奴等は手足が長く、攻撃力も高い。リーチもあって、豪腕。真っ正面から戦うとおそろしいが、ちょっとでも標準をずらせば奴等はラグが発生する。こいつら、手足が長すぎるせいなのか視野がせまい。一直線にしか攻撃できない。だから、その間に殺す)  しかし、これぐらいなら他のダイバー達も分かっていただろうに。 「つまり、こういうことだろ?」  ヒナタは天井を射撃する。  すると、先ほどのモンスターの肉片が降り注いだ。 「――天井?」 「手足が長いから、ま、移動はしやすいよね。こいつら、頭は飾りじゃないようだ」  だからこその奇襲。  天井から来るとは思わず、そしてその少しの油断が命取りになったようだ。  40234023942! 0-0942394-2049-294-23! 4324023402。  金切り声のようなものが聞こえる。  黒板を爪でひっかくという比喩が、ありありと使える声。  そして、同時に人でも鳴らす音が聞こえる。ドッドッドッド、と。足音らしいのが。  池袋駅構内全体を振動させて、迫ってくる。 「僕が、囮になる」と、日向はビーム剣を起動させて、光を出現させる。そして、平然と特攻じみた作戦を述べた。「二方向に分かれて迫られたら終わりだ。きみは、ここにいて仲間に報告。その後、僕を援護して」 「ほんとは、それを断らなきゃいけないはずだが。……ちっ」  そう、言っていられる時間はないようだ。  それしかない、そして、この作戦をやれるのはこいつだけ、と分かってる。
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