第1章

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 ヒナタは了承を聞く間もなく駆けた。スーツの性能もあるが、ハザードと化した彼はただでさえ身体能力が向上している。一瞬で彼の姿は遠くなり、瞬く間に姿が消えた。  005  ハザードと化した人間は、目に見える変化だけじゃなく、内側にも異変が生じる。  それが、ヒナタのような精神の問題であり――いや、何より身体能力の向上が大きいか。  ヒナタは幼い頃から内気で、運動も得意ではなかった。彼が着ているスーツは現代ではありえない素材で作られており、絹のように柔らかでなめらか、それでいてどんな鉄よりも強固で、さらにいえば、全身の細胞を活性化させて、運動能力まで高めてしまう能力も持つ――いや、それがなくても、彼の脚力はすさまじい。  池袋駅構内を短距離のように進む。  彼はあっという間に中央に到着、そこで敵の姿が見えると大声で叫びだした。 「ああああああああああああああっ!」  僕はここにいる、それを高らかと宣言する。  囮としては最適な行動、生物としては落第にもほどがあるが、敵は群がって日向に迫ってきた。  992319。 420-4202。 43824823481284823 430249290-4  敵は、さっきいたサカサやナガイ、他にも新しいので全身が水ぶくれになっていて、今にも破裂しそうな奴がいた。 (あれは、以前戦ったことがある。確か、『バクダン』だっけ?)  ヒナタはすかさず、その水ぶくれをトイガンで射殺する。  音もせず、一瞬で、水ぶくれに穴があいた。心臓のある箇所に的確に空けられた。  奴は群れの真ん中にいた。ありがたいごとに、奴の爆発は群れ全体を焼き払い、遠くのヒナタの方にまで灼熱の煙が風来する。 (やはり爆発した――あいつ、ちょっとの衝撃で爆発するんだよな。余裕あるときなら、助かるが)  池袋駅構内の中央は十字になっており、左右だけじゃなく前後からも敵が来る。  ――うしろから、水ぶくれのが数体見受けられた。トイガンで射殺――炎がヒナタにまでやって来て、彼を焦がそうとする。 (生身じゃ燃えカスだったな。それにしても、こんな数どこから)  と、そのときだ。
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