第1章

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 自分じゃ気づかれてないと思っているが、ヒナタは気づいている。これは、ヒナタの横にいた。場所は一番近いのだが、ヒナタの今の反射神経ならすぐに対応できる。 (問題は、前とうしろの……)  ただでさえ、距離を取って警戒してるし、めんどうだ。  トイガンの弾は光であり、これで撃てばまず外さない。避けることは叶わない。光よりも速いものなんてないのだ。しかし、一発当てたら、二発目は分からない。相手の移動力もすさまじく、瞬きする間にこちらに迫る者もいるだろう。ナガイがそうだ。さらにいえば、今回はヒナタの背後にも敵がいる。  意外だったのは、ヒナタの罠に死体に化けていたモンスターがのってこなかったときだ。  敵は自分の罠を見抜くほどの知性があるのか、もしくは何らかの理由があるのか。  それを考えると、ヒナタは突破口を見出せそうだった。  モンスターは基本は知性がないといわれる。中にはある者もいるのだが、少なくてもオーソドックスであるナガイやサカサなどは、話にならない。  だから、やつらは連携を取ることはない。連携とは知性という土台があってこそ成り立つ。ただ欲に飢えただけの生物じゃ無理なのだ。  おそらく、死体に化けてるモンスターも連携を取ってるわけじゃない。ただ、生き延びたいだけだ。そして、大勢のモンスターを討ち取った者を相手に戦えば死ぬのは確実。ならば、身を潜めてこのまま生き延びよう。ただ、それだけである。もし自分に近寄り生命に危険をなすというなら攻撃もしようが、それ以外だったらしないだろう。例えば、銃で撃たれたら戦うよりもまず、逃げるのではないか。  ヒナタはトイガンで撃つ。  撃ったのはモンスターにではない、死体に紛れてるモンスターが逃げやすいように、付近を狙っただけだ。それは闇雲に撃ったのではなく、確実にお前がいるのは分かってるぞ、という合図だった。  瞬間、眼前にいた手足長いのが攻撃してくる。ヒナタはすかさず、体を倒してよける――最中、後方ではさわがしい鳴き声がする。どうやら、逃げようとして後方にいたモンスターとぶつかったようだ。  その間、前方にいたのも意識をそちらに向けてしまう。  ヒナタは廊下に倒れながらも、トイガンを構え、射撃した。
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