第1章

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<やはり、全世界に存在する「穴」は問題ですね。中東やアフリカでは穴から得たハザードにより内紛やテロ活動が激化し、先進諸国もそれの鎮圧を理由にしてハザード兵器のテストを実施する。とくにアメリカのPMCの横暴については――>  空間液晶で、ニュースが流れていた。  昨今では空間に映像を表示させるAR技術が主流である。ケータイ電話の機能もそうだし、テレビ映像や、インターネットもそうだ。これは個人が身に付ける携帯端末ではなく、各家におかれてる、日向のとこでは天井上にはりつけられてある端末が映像を表示していた。  3LDKのマンションの一室。  それが彼の住む家である。社宅だ。  一番奥は寝室で、手前はリビング。左隣には和室があり、浴室は広く、三人ぐらいは入れる。  日向は洗面台にいき、顔を洗い、歯をみがいた。食事をする気にはなれなかった。鏡にいた自分は青白くなっている。  また、変な夢を見た。 「そうだ、あれは夢だ」  八代日向という人物になって、自分はPMC所属のダイバーであり、最高のエース、であるという夢。  あまりにもティーンエイジャーらしい夢だ。ほとほと、自分の願望にあきれる。  彼は歯を磨き終えると、クチをゆすいで、テレビのチャンネルを変えた。  また、ダイバーが死んだらしい。  池袋駅東口の男子トイレにある穴の探索――考えないことにした。  八代日向は、考えいないことにした。 「そうだ、僕は八代日向に憧れ、憧れるあまり彼の夢を見て、なりきってしまう一般人だ」  そうだ、一般人だ。  彼は埼玉難民でもないし、ハザードでもない。  彼はクチで何度もそう反芻する。  彼は再度、鏡に向かう。 「ほら、髪だって普通の色じゃないか」  彼の髪は緑である。 「……さて、今日はえーと、休みかな。そうだな、ちょっと外でもぶらりと散歩しよう」  外に出ると、何度か声をかけられる。  どうやら、自分は八代日向に似ているらしい。  どういうわけだろう。  彼は帽子をかぶり、眼鏡をかけて、最低限の変装はしている。 「やっぱり、八代日向さんだ。ほら、その緑の髪」 「か、髪?」  おかしいな、僕は普通の色なんだけどな。  黒なはずなんだけど……八代日向は、緑色の髪をいじくりながら、疑問に感じる。  彼は渋谷駅をうろついていた。
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