第1章

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「あぁ、こんにちわ、ミナミくん。きみ、今日は買い物かい。ダイバーはたまの休日を買い物ですます者もいるが気を付けなさい。大体は精神を騙すための依存によるものだからね」  日向をタンカーにのせて、白服たちは車へとつれてく。 「あ、あの」 「彼は病院に運ばれる。わが社と提携してるとこだ。大丈夫、彼を担当とする精神科医もいるから」 「せ、精神科医?」 「ほんとは、社員のプライバシーなのだが。いや、きみも彼と付き合いが多くなる以上は知っていた方がいいか。ダイバーとしてどうなるかも、ね」  と、龍宮隆三はいう。  そして、ミナミのかぶっていたニット帽をとった。 「あ、あぁ」 「ハザードとなったダイバーが髪の色を隠すのは法律違反だ。これが警察やマスコミに見つかっていたら、きみは逮捕されていたんだよ?」 「す、すいません」  ダイバーが、髪の色や目の色を隠すのは禁止されている。  ただし、それでも最低限りのプライバシーとして眼帯など一部のものは認められている。例えば、身体の一部が変形していたり、欠損していたり、などだ。  007 「皮肉な話だね。肉体の異変はプライバシーが認められるのに、髪の色や瞳の色などは認められない。これも肉体の一部なはずだ。そして、精神の異変は目に見えない部分だが、もっとも生活に影響するものだ」  それに関してはノータッチ。  ほんと、この社会は笑わせてくれる、と龍宮はいった。 「………」  ミナミは、居心地悪そうにしている。  彼女は、龍宮に誘われるままに車に乗せられた。車は、ご立派なことで武骨で高級感あふれるリムジンだった。  広い車内に向かい合わせで、社長とすわる。  深々とした座席は心地はよいのだが、それが余計に高級感を伝わらせ、緊張を増す。 「飲み物でもどうだい、あ、ついでだから、きみの家まで送ってこう。きみの家はどこかな」 「あ、あのぉ」  それよりも、と彼女は聞きたいことがあった。  リムジンの窓ガラスから、渋谷の街並みが見える。雑居ビルの看板が消えた代わりに、街中には空間液晶が乱雑し、前よりもうざったい。特定の人物とそいつにしか見えない広告を表示することもある。女性が通るとレディーズファッションの広告が表示されたり、男性だったらメンズファッション、人々は科学が進むことにより、町を歩くだけでまるで蜘蛛の巣にでもかかったかのように逃れられない。
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