第1章

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 第三国ではPMCもろくにないのが多く、そのため海外からの協力を頼むしかない。自国の庭で外国人が植民地のように身勝手にふるまう。それに怒り来る人たちはテログループになり、混沌は地獄へ。 「中国なんて面白い例だね。あそこはつい最近では笑える技術だったが、溢れんばかりの数で切磋琢磨している内に、気がつけば日本やアメリカが束になってもかなわない技術力を手にした。今じゃ、メイドインジャパンより、メイドインチャイナの方が期待されるほどだ。それはハザード事業でも同じで、経済格差はあちらさんはすごいが、その分、ダイバーを志望する者も多い。そのため、中国では一日ごとに科学の革命が起こってるといわれる。中国に遅れてなるものかと、今じゃアメリカが焦るほどになってしまった。だが皮肉かな。中国はあまりにも広い領土を持つゆえに、国家で確認しきれない穴もある。それが非政府組織と関わり、あそこではテロも相当なものらしい」 「なんの話がしたいんですか」  さっきから、話が壮大すぎて本筋が曖昧である。肝心の話が聞けていない。  八代日向の話が聞けていない。 「これは日本でも同じで、中国に焦り、アメリカに急かされて、ハザード事業を整えたはいいが、ほとんどは労働環境が最悪な劣悪企業ばかりだ。中にはヤクザそのものが関わってる会社もある。だから、私は考えたのだよ。この会社では、この会社だけでも優秀な人材が働きやすいよう、サポートし、日本を支え、リードしようと」 「……八代先輩は、その。支える必要が」 「一言でいえば、心の病気だ」  皮肉な病にかかってる、と龍宮はいう。 「自分は世間で知られている、八代日向ではない。一部ではヒーロー扱いされている者ではない。むしろ、その彼を信望し、あこがれる存在。ただの一般人だとーー思い込む、病さ」 「な、なんですかそれ」  有名人がいて。  自分は有名人ではなく、有名人にあこがれるファンだと、思い込む、ということか。  そんな病、はじめて聞いた。 「心なんてものは複雑で曖昧でわけの分からない。シャボン玉の液体に見えてくるようなカラフルな世界なのだろう。だから、そんな理解不能な症状も出てくる。いや、あながち理解しきれないとはいえない。彼は、普通でいたかったらしいからね」 「普通……」 「埼玉難民。きみだって分かるだろ?」  その言葉は、ミナミには重かった。
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