第1章

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 ちなみに、これはAIだ。高性能なAIを備えた、映像。脳内の映像。  昨今の電話はもはや小型の域を越えて、十円玉サイズで何でもできる時代となった。脳に直接信号を送り、拡張領域(AR)で情報を表示する。このティンカーベルもその一部だ。  現在、二〇〇五年。  本来ならここまでの技術はまだまだ先だったろうが、ある現象によってそれは大きく変わってしまう。  穴だ。  穴。 「すべては穴がいけないんだ」 「何、ぶつくさ言ってんだ。糞しねーならさっさと出ろ」  ブーたれてたら、監視に怒られた。  穴。 (s_全ては五年前だっけ。あれから、世界中が狂っちゃった)  穴。  それは、突如出現した。  一番最初はアフリカのナイジェリアだったらしいが、それは大した差でしかなく、ほぼ全てが同時期に出現した。  穴。  ここじゃないどこかへ、異世界に通じる穴。  異世界といっても、剣と魔法のファンタジーではなく、現実世界に瓜二つの世界が広がる。東京の穴なら東京の風景が、ニューヨークならニューヨークの風景が。  しかし、外観が同じでも穴の中は人がおらず、いたとしても人の形状を保っておらず、中にはファンタジーというよりホラー映画のようなモンスターもわんさかいる。 (でも、穴には貴重なものもたくさんある。現代科学をはるかに越えたオーバーテクノロジーがそこら辺に転がってる)  ティンカーベルのAIやARもその恩恵を受けている。いずれ、たどり着く先ではあったろうが、あまりにも早くたどり着いてしまった。 (s_でも、モンスターがいっぱいで並大抵の武力じゃ適わない。だから、穴の探索は世界各地で国をあげて行われた。量子コンピュータ以上の危険性を含んだオーバーテクノロジー。自国の利益のためだけじゃない、他の国が所有したらと不安でしょうがなかった。アメリカは良くも悪くも、民間の手も借りてうまくひとつの産業を作り出した。それが、民間軍事会社(PMC)による穴の探索)  ダイバー。  これはあくまで通称で、正確には彼らは会社に雇われたアルバイトである。  仕事上の役割は、穴の探索と穴に存在する物品の確保、および運搬。 (あきらかに過剰な武力の保有と使用も法改正で認められた)
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