第1章

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 生命保険の対象外。あまりにも危険の高い仕事で、死んだとしても遺族は文句言うなという誓約書も書かされる。それ以下のも書かされる。しかし、それでもダイバーになる者はあとを絶たない。オーバーテクノロジーを持ち帰ると、莫大な報酬が約束される。一億や十億も珍しくない仕事だから。  ……あくまで、生きて帰れたらの話だが。 (s_あんたには目的があるんでしょ?)  さっちゃんはささやく。 (あぁ、そうだよ)  ちなみに、穴に存在するオーバーテクノロジー、その他もろもろは全部まとめて『ハザード』と呼ばれる。  ハザード。  ハザードには複数のタイプが存在し、モンスタータイプや装備タイプ、日向が着てるスーツもそれだ。ともかく、種類毎に分かりやすく分類されているが。 「まず、一つ目。目や髪を元にもどしたい」  日向の髪は緑に変色していた。  左目も大きめの眼帯で覆っている。  ――ハザードは人も含まれる。  穴に潜ると何らかの影響を受ける。日向がもらったのもそれだ。見かけだけの問題じゃない、身体能力及び思考も以前とは大分変わってしまった。元からオタク気質ではあったが、ここまで根暗ではなかった。  ハザードは、彼らダイバーも含まれてしまう。  別にあそこから来たわけじゃないのだが、周りから見たら同類なのだろう。身体の異常な変化と、金に目がくらんでなった愚か者、その二重の真実が恐怖に引火して、ダイバー全員が嫌われている。  社会全体から。 (s_二つ目は?) 「金がほしい。平穏に暮らせるだけのお金が」 「おい、ブツブツ言ってないでさっさと」 (三つ目は?) 「それは――」  ガンっ、とドアが蹴られた。 「!?」  目を見開く日向。おいおい、今日の監視は一段と厳しいなと腰を上げたときだ。ドアを蹴った者はドアをのぼって、個室の中に入ってきた。 「な、なつみ?」 「な、なつみ? じゃねーよ、バカ!」  日焼けした女性が日向にチョップする。  Name:なつみ age:22 sex:女  歳は若いが、日向のようなティーンエイジャーではなく、二十歳を越えている。今は十五も成人だが、それよりも大人びて見える。  彼女もうろこのようなスーツを着て、タクティカルベストを身に付けてる。ヘルメットは来る前に外したようだ。豊満な胸はベストをふくらませ、しなやかな肢体は豹のように立派である。 「おい、ここ男子トイレ」
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