第1章

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 一応、日向もやってはいるが、覚束ない感じだ。  冷や汗までたらしている。 (こう、集団で熱気が強いの苦手なんだよなぁ)  いや、彼が集団行動が苦手なだけなんだろうが。一応、彼いわくそれだけじゃないらしい。 (……まるで、巨大な怪物になりそうで)怖い、と彼は思っている。  ただでさえ、ハザードと化して化け物と嫌悪されるのだ。熱気がすごい集団に入ったら、巨大怪獣のようになってしまうのではと恐れている。  003  ミナミは不安だった。 (この人、大丈夫かなぁ)  憧れの人でもあった八代日向は、分かりやすく萎縮していた。  社長がみんなを盛り上げてるのに、一人だけ顔をうつむかせ、小刻みにふるえている。 (これがエース……)  ダイバーに関しては、世間では否定的な意見が多い。  金に目がくらんでやる輩がほとんどのため、そりゃ仕方ないってのもあるが、それ以上に恐怖心が強いのだろう。髪や目が染めたわけでも、カラーコンタクトをしたわけでもないのに変色し、もっとすごいのだと片手だけが巨大化したり、中には超能力じみた奴もいる。  そんな存在、恐怖しないって方がおかしい。  そのため、リベラルな人々は最初は反対していたものの、次第に彼等も恐怖し、国連でさえ、彼らに爆弾を埋めこむことにした。  比喩ではない。  本当に爆弾を埋めこんだのだ。 「………」  ミナミは、無意識に自らの首筋をさわる。  爆弾が埋めこまれた場所。会社の規定というより、世界の法律で、ダイバーになる者は爆弾を埋めこむルールになっている。爆弾といっても大した威力はない、だが、確実に首はめちゃくちゃにする力がある。  もし、ダイバーが暴れて一般市民を襲ったら即座にこれは発動する。  例がないわけじゃない。現に、世界で何件か彼らが被害をもたらしたケースが報告されている。また、これはデマにすぎないのだが、ハザードは感染するものと噂が流れ、それにより恐怖が倍増してるというのもある。 (だけど、お金を稼がなきゃ)  この仕事は時給が二万円と高いが、その他に誘因(インセンティブ)となるものがある。  ハザードを持ち帰った場合の報酬は最低でも数千万円だといわれる。  これが、ダイバーのあとが絶たない理由だ。 「とうさんっ」  ミナミの家は母子家庭だ。  数年前は父がいた。しかし、死んだ。  たまたま、埼玉に出かけていたのだ。仕事の都合だったらしい。
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