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「あら?2時間後っていったのに随分早いのね」
「そちらこそ、まだ20分前ですよ?」
携帯の時計機能を使って時間を確認する。
「私たちは仕事だからね。でもあなたはまだ違うわ。もっとも、オッドロスに乗るようになったら搭乗手当てパイロット手当てなんかもつくようになるから仕事になるでしょうけどね」
「思い出を引き換えにですけどね」
「まぁ…人はどんなことをするにしろ何かを犠牲にして生きているわ。それが人間ってものじゃないかしら」
その美夏の言葉が諦めの言葉なのか慰めの言葉なのかどうか葵にはわからない。
「人を納得させたいのか諦めさせたいのかどっちですか?」
「両方!」
美夏は屈託のない笑顔を葵に向ける。
地獄に突き落としてきた人物の純粋な笑顔に意表をつかれ、思わず唖然とした表情を浮かべる葵。そして、小さな声でフフっと笑った。
やがて、美夏の車は2階建てぐらいの駐車場へと入っていく。
まばらにぽつぽつと止まる車。薄暗い内部。特にこれといった特徴もない駐車場だった。月光対策省というからには大仰なでかいビルぐらい建っていても良さそうなものだが、あたりにあるのは、小さいコンビニと3階建ての建物ぐらいのものだった。
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