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3階建ての建物もそれが月光対策省のものというわけではなく、いろいろな企業が入っている複合型の建物だ。
なんとなく肩透かしを食らったような気分になってしまう葵。
ガコン!
「うわ!?」
急な衝撃に車の中で上半身が前に持っていかれる。シートベルトをしていなければ、助手席のサイドボードに頭をぶつけていたに違いない。
「この衝撃、私も慣れないのよね」
美夏も葵のびっくりした姿に苦笑している。
葵が車の窓越しに外を見ると、一面真っ暗闇だった。正確には上から光が差し込んでいるが、その光は少しずつ遠くなっている。
上を見上げると、自分たちが先ほどいた駐車場が見えた。その駐車場は少しずつ離れていき、離れるのと同時に天井がスライドしていき、光を完全に遮断した。
暗闇に目が慣れたころにもう一度外を見渡すとむき出しの金属の壁が車を覆っている。
「月光対策省行きの自動車のエレベーターよ」
エレベーター不思議な浮遊感がした。下へ下へと降りていくのが感覚で分かる。やがて、落ち続けるとその感覚が少しずつ麻痺して上がっていくかのような錯覚を起こす。
一体地下何メートルあるのだろうか?と疑いたくなるほどだった。
長い浮遊感が唐突にガッコンっという音と振動とともに止まる。
「着いたわよ。さぁ行きましょ」
車のドアをがちゃりと開け、真っ暗の部屋の中の明かりが灯ったドアの方へと歩いていく。薄暗い明かりが灯り、特殊な人間しか来ないということを暗に物語っている。
ドアにはドアノブや取っ手自体がなく、スライド式の扉になっている。
「ここはカードキーを通さないと開かないのよね。ここに来れる人間なんてものすごい一部しかいないっていうのにさ」
美夏はカードキーをめんどくさそうにポケットから取り出しドアの隣の機械に通す。すると、ブザーが鳴り響き、プシューという音ともにドアが開く。
「頑丈すぎるセキュリティーも考えものね。頑丈すぎるセキュリティーは人の自由を阻害するわ」
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